古墳の町・西都市
宮崎県の中央に位置する、西都市。
この地には「西都原古墳群」と呼ばれる、日本最大級の古墳群が広がっています。
4世紀から7世紀にかけて、現存するだけでなんと319基もの古墳が造られました。
おおよそ南北3km、東西2km の範囲にわたって、大小さまざまな古墳が点在しています。
陵墓参考地(皇室にゆかりのある人物が埋葬されている可能性がある)である男狭穂塚古墳・女狭穂塚古墳のほか、日本では非常に珍しい、土塁が周囲にめぐらされた鬼の窟(おにのいわや)古墳などが有名です。1
ちなみに「西都市」という名前、いかにも「古代には西の中心地でしたよ~」みたいな市名2ですが、近年よく見られる「キラキラ市町村名」(南ア○プス市、㈣国中央市など)ではありません3
航空写真にあの「鍵穴」が!
さて、本題に入ります。
西都市の玄関口となる、東九州道・西都インターチェンジの航空写真を下に載せます(一部途切れていますがご容赦ください)
西都市の中心部から南に少し行ったところに西都ICはあります。
画像左下から上に向けて延びているのが高速道路の本線です。
中心の右下あたりにある料金所に向けて、本線の各方向から取り付け道路(ランプと呼ばれます)が通じており、上り線から出ているランプが円を描いています。
この形の IC は、その見た目から「トランペット型」と呼ばれており、日本中いたるところで見られます。
どこにでもあるような、ごく普通のインターチェンジのようですが、よーく目を凝らしてみると…
!!!
上り線ランプが描く円の中に、見覚えのあるものが!!
日本人なら、歴史の授業で誰もが教わる「前方後円墳」らしきものがあるではありませんか!!
しかも1基では物足りず、南北それぞれ違う方向を向いた古墳が2基あるのです!
色別標高図という、高さによって色が変わるを見ると、不鮮明ながらもあの「鍵穴」の形が見えます。
日本には星の数ほどインターチェンジがありますが、「古墳が取り込まれた」インターは聞いたことがありません。おそらくここが唯一の存在でしょう。
しかしこの一対の古墳、なぜこんなところにあるのでしょうか?
元からあった説
「ひょっとして、元から古墳があったのか?」
筆者は最初にそう考えました。
西都は古墳の町。西都原古墳群以外にも、三財古墳群や新田原古墳群など、一帯には他の古墳群も点在しています。
であれば、この「インターチェンジ古墳」も天然モノ(天然ではない)だとしてもおかしくはありません。
しかしその考えはすぐに覆りました。
国土地理院の「地理院地図」では、年代別の空中写真が手軽に見られるのですが、右の写真は1970年代に撮影されたものです。
西都 IC が開業したのは 2001 年と割と最近のことです。
東九州道が見る影もないのはもちろんのこと、写真左端には1984年に廃止された国鉄妻線が通っています。廃線跡は国道のバイパスの一部として活用されています。
例の古墳があるはずの場所を見ても、そこにあるのは田んぼもしくは畑だけ。古墳のコの字もありません。
よく考えたら、一対のきれいな前方後円墳が、きれいな 180° の互い違いに並んでいて、しかもその古墳に、高速の IC のランプがきれいに重なるように建設を計画される、なんていうのは出来すぎた話です。
ということで、ランプの古墳は少なくとも1970年代以降、そしてほぼ間違いなく2001年の西都 IC 建設に併せて造られた、というこがわかりました。
NEXCO西日本 に訊いてみた
念のため、古墳時代に造られたわけではないという確証を得るため、高速道路を運営する NEXCO西日本(西日本高速道路株式会社)に問い合わせてみました。
2001年当時、高速道路を管理していたのは「日本道路公団」と呼ばれる国の出先機関のような組織でしたが、現在では民営化され NEXCO となりました。
組織が変わったとはいえ、社員や各部局はそのまま NEXCO に引き継がれたため、当時の資料や建設時を知る社員さんなどがいるかもしれません。
ということで、NEXCO西日本 にメールで問い合わせをしてみました。
- 西都 IC のランプの中にある古墳2基は昔からあったものなのか、それとも IC 建設に併せて造ったものなのか。
- IC 建設に併せて造ったのであれば、どういう経緯で古墳を造ることになったのか。
1週間ほどしてから、NEXCO西日本 宮崎支社の方から電話がありました。4
電話だったので正確な文言までは覚えていませんが、おおむね下のようなことを返答いただきました。
- 元々あった古墳というわけではなく、IC 建設に併せて植栽の一部として造られた。
- 西都市は古墳が有名ということで、当時の建設担当部門が IC の設計に取り入れた。
- より詳しい古墳建設の経緯は不明。
結論
ということで、世にも珍しい「高速ランプ内の古墳」は、
観光振興のために、インターチェンジ建設と同時に造られたもの
だと判りました(汗)
この「人工古墳」は、西都ICを利用するときに一応見えますが、上から俯瞰するわけではないので「あ、古墳だ!」と判るほどはっきり見えるわけではありません。
ですがよければ、高速を通った時に「あ、あれねーへぇ~」となる程度に、古墳を見てあげてはどうでしょうか(笑)
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