お待たせしてすみません m(__)m
前回は、宮崎で開かれる「ひなたフェス2024」における、JRの輸送と来場客数について話した。
- 終演が遅いため、各方面への終電まで十分余裕がある。
- JR九州により、アクセス路線・日南線で極限まで増発が行われる。
- それでも、JR日南線の輸送力よりも利用者がはるかに大きい?
前回
宮崎で大規模イベントは開けるのか? – (4) JR での観客輸送 – 宮崎「ひなたフェス2024」の場合
前回の計算では、JR日南線とシャトルバスではライブに来る観客をというてい運びきれない、ということになった。今回は、本当に運びきれないのか考察していく。
ライブは「満員御礼」になる?
前回、「ひなたフェス2024」ライブの定員は約2万4千人と述べたが、
そもそも満員になるのだろうか。
宮崎県の人口は100万人強しかおらず、県内に住んでいる「日向坂46」のファン(通称「おひさま」)の数は限られる。ともなれば、ライブの観客の大半は県外からやって来るだろう。
鹿児島など日帰りできる範囲であれば話は別だが、他の地域からだと1泊はしないといけない。
そこで問題になるのが、宿泊施設の数だ。
宿泊施設数に関する統計は少し古い資料しかなく1、宮崎県内に存在する宿泊施設の「室数」は、2013年度の時点でおよそ1万5千部屋だった。
コロナ禍や人口減少で部屋数が減っていることも考えて、現在では1万2千部屋ほどになっているだろう。1部屋あたりの定員の平均を1.5人と仮定すると、1万8千人ほどしか宮崎県内に泊まれないことになる。
宿泊施設の面からみると、会場の定員である約2万4千人が埋まるのはほぼ有り得ないなのだ。
ここから色々とややこしい計算をしていったところ、終演後にどれくらいの人がJR・バスを使うのか推定できた。
- JR 南宮崎駅方面:4,930人
- JR 青島・日南方面:900人
- 宮崎市街地方面シャトルバス:780人
- 青島方面定期バス :260人
宿泊施設のキャパシティを基に計算したところ、JR日南線(南宮崎方面)を使う人は
4,930人程度
となった。
次の章で長々と計算の過程を紹介しているので、興味がある人は読んでください。
興味がない人は、飛ばして次の章に行ってもらえればと思います ^^;
移動方面・移動手段ごとの人数推定
宮崎県というのはとても広く、会場から遠いところだと100km近く離れたところにも街がある。
そこまで離れた宿となると、たとえ自由の利く車で来た人であっても泊まる対象にはならないようで、予約サイトではライブ当日であっても1万円以下の部屋が沢山あった。
そうしたエリア2の宿の部屋数は全体の15%ほどだと仮定すると、会場から現実的な距離にある宿泊施設の収容人数は約1万5300人だ。
また、そうした宿泊施設に泊まる全員が全員ひなたフェスに来るわけではない。収容人数のうち8割がフェス来訪者だとすると、1万5300人 × 0.8 = 12,240人となる。
ところで、車で来る人の数は7,000人程度だと前回予想しておいた。宮崎空港などでレンタカーを借りて来るという人ももちろん沢山いだろうが、筆者は九州内の自宅から自分の車で直接来る人が多いのではないかと思う。
こうした人たちの中には、ライブが終わった後深夜まで車を運転し、その日のうちに自宅に帰る人も大勢いると思われる。3
車で来る7千人のうち、宮崎県内の宿に泊まる人はおよそ7割、約5,000人ではないかと予想しておく。
会場からアクセスできる県内のホテルに泊まるひなたフェス参加者12,240人から、車で来る5,000人を引くと、残りは7,240人となる。
しかしこの中には公共交通でアクセスできない施設も含まれており、公共交通勢はそもそもそうした宿は予約しないだろう。こうした宿泊施設を1割とすると残りは約6,500人だ。
すなわち、JR日南線と市街地方面シャトルバスが運ばなければならない人数は合わせて約6,500人ということになる。
前回、ライブ会場の定員から考えた公共交通利用者は15,500人だとした。しかし宮崎県内の宿の定員数を考えると、6,500人しかいないのである4。
前回述べた通り、JR九州は終演後に列車で運べる人数を4,000人と発表している。しかしひなたフェス実行委員会の発表5を見る限り、これは南宮崎駅方面に向かう列車の輸送力だ6。
反対方面となる青島・日南方面にも列車が3本運転され、定員の合計は約900人7もある。
次に、会場からのバスについてみていく。
終演後のシャトルバスとして、宮崎市街地に向かうものが設定されている。明確な本数は発表されていないが、バスが満員になり次第順次出発することになっており、終演時刻から2時間継続される。
全国的なバス運転手不足は宮崎交通も例外ではなく、数十台も走らせるということはできないだろうが、最低でも12本は運転されると考えている8
バスの大きさは様々だが、1台当たり平均65人乗れるとして、バスで運べる人数は 65人 × 12本 = 780人となる。
他にもいくつかバスが運転されるので列挙すると
- 定期バス 運動公園前 → 青島:4本・260人
- 近隣のキャンプ場行きシャトルバス:2本?・130人
これらを差し引くと、4,430人となる。
ところで、お隣の鹿児島県も一応ライブ会場からアクセスできる範囲内だ。これらの宿に終演後JRで移動する人もいるだろうが、上記の4,300人にまだ加えていない。
JRで鹿児島県内のホテルに向かう人の人数を計算するのは難しくかなり迷ったが、JRの列車の定員数からおおむね500人と考えた9。
こちらも合計すると、JRで南宮崎方面に向かうのは4,930人と試算できた。
都会の満員電車以上の込み具合
列車の定員から南宮崎方面の混雑率を計算してみると、123%となった。
数字だけ見ると、東京や大阪の満員電車と同じくらいの込み具合だ。しかし当日は大きな荷物を抱えた人が多いため、実感としてはそれ以上の混雑になると思われる。
当日のJR木花駅には数多くのJR係員が配置されると思われるが、観客を運びきれるかどうかは彼らにかかっている。
通路の中ほどまで入るように案内10したり、網棚におさまる荷物は網棚に入れてもらうようお願いしたりするなど、各列車に少しでも多くの人が乗れるよう案内をすることが必要だ。
これさえできれば、5千人弱のお客さんをさばくことは可能だと思おう。
ということで、時刻表鉄道ニュース氏の「新幹線のない県で大規模コンサートを開いたら大変なことになる」という主張は、(JR・バスに関しては)辛くも退けることができた、ということにしておく(渋滞に関しては次回やります)。
新幹線があったら?
ところで、このシリーズの初回で私はこのように締めくくっていた。
今回のライブは「新幹線がないからこそ」成功する
では、もし宮崎県に新幹線があったらどうなっていたというのか。
宮崎県にも「東九州新幹線」という新幹線の計画が一応ある。福岡県から大分県、宮崎県を通り鹿児島県の鹿児島中央駅へと至る計画だ。
まあ、仮にできるとしても開業は2070年以降になると思うが、仮にこの新幹線があった場合、現在とは比べ物にならないくらい他県との移動時間が短くなる。
新幹線が宮崎駅を通るとして、そこから各駅への移動時間は以下のようになる。(カッコ内は現在の所要時間)11
- 大分:48分(3時間9分)
- 小倉:1時間20分(4時間32分)
- 鹿児島中央:29分(2時間9分)
ご覧のように、現在と比べるととんでもない時間短縮になることがわかる。
これほどまで他の都市部と近くなれば、「宮崎のホテルはどこも高いから、大分や鹿児島に泊まろう」ということが簡単にできるようになり、より多くのお客を大規模イベントに呼び込むことができるようになるだろう。
しかし一方で、会場から新幹線駅まで公共交通で移動する人がさらに増えてしまう。今回の「ひなたサンマリンスタジアム宮崎」で開かれるライブでも、JR日南線・宮崎交通シャトルバスともに限界ギリギリであり、終演後に他の地域へ移動する人がこれ以上増えたらパンクしてしまうのは間違いないだろう。
そういう訳で、「ひなたフェス2024」は「新幹線がない」宮崎県で開かれるからこそどうにかなる、と言えるのではないだろうか。
次回は、会場周辺の道路事情をもとに、渋滞の懸念について考察します。
次回
宮崎で大規模イベントは開けるのか? – (6) 会場周辺は大渋滞?「いいえ、渋滞しません!」
https://ikeboichi.blog/368/
注釈
- 都道府県データランキング > ホテル・旅館
- 高千穂町、日之影町、小林市、えびの市、串間市など
- ただ、九州内から来た人であっても「せっかく宮崎に来たから、ちょっと観光してから帰ろう」と考え、ホテルを予約する人も多いはずだ。
- 鹿児島県内に泊まる人を含めると、7,000人ほどか?(後述)
- ひなたフェス2024対策本部「本日から3回にわけて、交通、宿泊の追加施策について、詳細をお伝えします。まず、3つの臨時列車の運行が決定。ライブ終了後、木花駅から南宮崎駅まで、追加で約4000人の方に利用していただけます」
- 厳格に計算してみた。日南線で使われるキハ40系による列車の定員は、3輌:約360人、2輌:約270人、1輌:約90人。南宮崎方面の普通列車のうち、臨時列車9本が3輌、定期列車3本が2輌で運転されると仮定すると、臨時列車の定員は9本 × 360人 = 3,240人、定期列車の定員は3本 × 260人 = 780人となり、合わせて4,020人となる。
- 木花駅20:15発青島行きが3輌、21:19発南郷行きと23:13発油津行きが2輌と想定
- 日中の臨時シャトルバスを運転するには最低でも6台必要であり、その運転手がそのまま終演後のバスも担当すると考えた。また会場~市街地の往復に1時間かかるため、2時間の間に1台当たり2本運転できる。
- 終演後、南宮崎駅から国分・鹿児島中央方面に向かえる列車は普通2本、特急2本(おひさま1号・3号)ある。南宮崎発車時点での各列車の混雑率が120%、乗客のうち鹿児島県内まで向かう人の割合が普通列車は3割、特急は7割と仮定すると、普通:定員約260人 × 120% × 0.3 × 2本 ≒ 187人、特急:定員約190人 × 120% × 0.7 × 2本 ≒ 319人で、合わせて506人となる。
- 使われる車輌は1輌につきドアが2か所しかなく、ドア付近に人が溜まりがちだ
- 東九州新幹線調査結果 – 東九州新幹線鉄道建設促進期成会
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